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JTPA ギークサロン
「洛西一周氏と新しいインターフェイスの発想について語る」
8月8日金曜日午後7時
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今回のギークサロンは「紙copi」、「NOTA」の開発者、洛西一周氏にホストしていただきました。
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以下は吉澤剛氏によるレポートです。
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今回のセミナーでは、洛西さんに彼のUI開発手法やUI哲学について、これまで彼が作ってきたアプリ(ジョークアプリ含む)を例に語っていただいた。
例えば、個性豊かな個人秘書(犬のタローや母ちゃん,etc)がskype経由でToDO管理をしてくれる「デキる俺」と、自動情報収集プレゼンメーカーのMashStar。一見まったく関連のないこの2つのジョークアプリは、実はともに「何かを作る/入力する障壁をとにかく減らす」という彼のUIに対する姿勢から生まれたもの。本来見たくもない仕事のリスト、面倒な管理作業の障壁を取り除くには、楽しいskypeチャットにしてしまえばいいという発想から「デキる俺」が生まれた。また、MashStarにいたっては、作業を減らすどころか、ズバリ「準備ゼロの最強プレゼンテーション!」をねらったもの。どちらもジョークアプリだが、何かを発想するときに核となる哲学があることの重要性を物語っている。


シンプルで単一の機能しか持たないシステムでも、UIを工夫するだけでおもしろいことができるという例が、地域限定イベントコミュニテイーサイト,cotocoto。イベントはカテゴリー分類され感情検索が可能だが、実はどちら全文検索でAND検索しているだけ。それでもサイトは充分に機能し盛り上がっている。ユーザーがカテゴリーや感情とう項目を別途入力する必要もない(入力の手間を減らす)。さらに、イベントの登録は必要最低限の情報で登録でき、付加情報は後から追加出きるようにしている(最初の負担を減らす)。
プログラミングの常識を真っ向から否定するような工夫も多数紹介された。紙copi、紙copi
Netでは、ユーザーの「ファイル保存」の手間を省くために、ファイルは常に自動保存される。四六時中ディスクアクセスが発生するが、ユーザーの手間を省くことのほうが大事。また、コンマ1秒の反応の差でも大きな違いがあり、たとえばマウスイベントなら、Down(押された瞬間イベント発生)とClick
(押し終わった後イベント発生)は適時意識して使い分けているとのこと。極めつけは、エラー率が低いのならそのアクションは成功すると仮定してユーザーに反応をすぐに返す、「そをつき印象をかえる」という手法。フォルダアイコンが押されたら、そのフォルダがその時点で存在するかどうかのチェックは後回しで、まずアイコンを押された状態に変更する。ファイルのスクラップをとる場合は、完了前に「完了しました」と通知するなど。このような常識を覆す発想が可能なのも、自分のUI哲学にこだわりと自信があり、常日頃からそのUI哲学目線で物事を観察しているからこそ可能なのだと強く感じた。
セミナー後半は質問、議論にあてられ、UI開発を行ううえで誰もが直面する葛藤、バランスのとり方に関する質問が多数なされた。
Q. UI思考 vs スペック思考
UIセントリックでない上司やエンジニア、VC等はたくさんいるが、彼らを説得するときは、その人が左脳型であればUIこそが競争優位になるという事例やデータをつかって説明、また右脳型であれば、実際に動くプロダクト
or モックアップをつかってビジュアル的に説得するとのこと。
Q. 初心者向けUI vs 玄人向けUI
初見で理解できる初心者に優しいUI、使い込んで初めて味が出てくる玄人向けUI
のどちらが大切かという質問に対しては、どちらも大切で、決して対立する概念ではなく共存できるし、両方を兼ね備えるUIを目指しているとのこと。ただ初心を忘れないことはとても大切だが実際はとても難しい、なのでユーザビリティーテストは重要視し、数パターンのスタイルでテストを行っているとのこと。
* ユーザー一人づつ:事前の説明はほぼなしで使っている最中に思ったことを何でもしゃべってもらうというスタイル
* 友達(2人~5人)と席を並べてやってもらうというもので、分からないところをお互いに聞いたりしながら使ってもらう
* 遠隔のテスト。自宅でテストしてもらい、後からアンケートに記入してもらう。
リラックスしてもらうために、オフィスではなく自宅やカフェなどでテストするということもときどきやっていて、学生のテストを学生寮でやったこともあるらしい。
Q. UI開発 vs スピード開発
徹底的に考えぬくUI開発でどこまで時間を費やすかは、時間を費やした分だけ進捗するわけではないので無駄に時間を費やし兼ねない難しい問題。まずコンセプト発想段階では徹底的に考え抜く。50のアイデアをだしてもらってそのうち採用するのは1つだけ、また50アイデアをだし1つだけ採用といった具合。UI実装に関しても、上述したようなユーザーに楽してもらったり快適に感じてもらうためのこだわりを持つ。しかし、こまかなデザインの差(微妙な色の違いやサイズに関して)はそれほど時間をかけないようにしているとのこと。モックアップ作りに関しても、人的時間的に大変なのでFlashでフル実装をすることはなく、Illustratorを利用。また最初の発想、コンセプト構築段階では紙を多用するとのこと。まだまだパソコンは紙に取って代われるような手軽なツールにはなっていないが、この限界を破壊すべく、紙なみに手軽にでカジュアルに発想・コラボレーションするためのツールを目指して、現在NOTAを開発中。
気がつけばあっという間に会場締め出し時間の10時。それほど前半後半ともに面白くかつ内容の濃いサロンであった。
デキる俺 : http://ore.rakusai.org/
MashStar : http://mashstar.com/
cotocoto : http://cotocoto.jp/
紙copi : http://kamilabo.jp/
紙copi Net : http://kamicopi.net/
NOTA : http://notaland.com/