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2003年03月02日
コラム : Diversity
ある半導体のベンチャーのVPが「うちの会社はアメリカ生まれ白人比率が高い」というので「どれくらい?」と聞いたら「30%は越してるんじゃないかなぁ」という答え。「たった30%」が「多い」となるのだ。が、アジア人のエンジニア比率が高い半導体会社ではそんなものだろう。話している本人もABC(American Born Chinese)だった。
シリコンバレーではアジア人が増えている。
San Jose Mercury Newsの調査によれば、当地の大企業トップ10社(*)の社員の人種別内訳で、1996年には17%だったアジア人は、2000年には21%にまで増加した。地元のSan Jose State大学では、50人のクラスのうち40人以上がアジア人ということさえあるという。2001年のデータでは、同大学工学部の生徒のうち、白人740人に対してアジア人は3003人とのこと。UC Berkeleyだって、キャンパスにはアジア人が多い。彼らが当地の企業に就職していく将来を考えても、アジア人の増加傾向は当面続くだろう。一方、アジア人以外の非白人は微増に過ぎない。
つい先日も、仕事の打ち合わせで黒人の技術者が相手側企業から参加したのだが、その時初めていかに普段黒人の人と出会う機会が少ないかに気づいた。前述の「シリコンバレー大企業トップ10社」調査でも、1996年から2000年にかけて、ヒスパニックは7%で横ばい、黒人は4%から5%への微増だ。パロアルトあたりからサンノゼあたりまでをカバーするサンタクララの人口のほぼ4分の1がヒスパニック(なんと、当地で最も視聴率の高いニュース番組はスペイン語放送のニュースだったりする)であることを考えると、シリコンバレーの企業でいかに彼らの数が少ないかがわかる。知人の働く30人ほどのベンチャーの社長はメキシコ出身なのだが、ある日新聞を開いたら「輝けるヒスパニックリーダー」といったようなタイトルで彼の大きな写真が載っていた。それくらい珍しい存在なのだ。
こうしたヒスパニック・黒人の少ない状況を打開しようと、大企業は苦心している。
diversityが増さないとpolitically incorrectで社会から攻撃されるということに加え、「差別を行う企業には政府から事業を発注しない」という法律もあるからだ。
ちなみに、アメリカでは大学入試におけるaffirmative actionが廃止される傾向にある。Affirmative actionは、人口比に比べて入学人数が少ない人種のテストの点にゲタを履かせたり、人種ごとの人数枠を設けたりすることで、マイノリティ、特に黒人やヒスパニックを増やそう、というもの。(アジア人は白人より成績がよいので、結果的に保護される対象とならない)。これが「逆差別」ということで各地で問題になり、University of Californiaでは1996年から廃止されている。
今はMichigan大学のaffirmative actionを廃止するかどうかが最高裁で争われているところだが、これに対し、多くの大企業が「廃止しないで欲しい」と嘆願している。ハイテク企業からも、Intel, Lucent, Microsoftが嘆願に参加。優秀な黒人・ヒスパニックの社員を増やすには、まず大学でもそうした人種を増やして欲しい、というわけだ。
余談ではあるがこのあたりの新聞なんかで人種を表現する時によく使われる表現はblack, Latino, white, Asianとなる。LatinoとAsianは大文字で始まる。昔日本の雑誌向けに「黒人」という表現を使ったら「差別表現だからアフリカンアメリカンにして欲しい」といわれたことがあった。確かに、より丁寧な表現はアフリカンアメリカンである。が、マスコミレベルではblackという表現をよく使う。
なお、さらに余談だが、他人と話すときに、相手の人種・民族に関する話題は基本的にはタブー。日本で社会人になってすぐの研修で「名刺を受け取ったら、相手の名前について『珍しい苗字ですね、ご出身はどちらですか』などとひとこと言う」と習ったことがあったが、これは当地では全くもってマナーに反する。
例えば日本語が堪能なWeitzmanという姓の知り合いがいるが、何人もの日本人が彼に「イスラエルのワイツマン研究所と関係がおありですか」とか「ご出身はイスラエルですか」などと聞いているのを見たことがある。しかし、ユダヤ人問題は複雑なので、よほど親しいか、相手から話題を振られた時以外は持ち出さないのが暗黙のルール。聞いている側は「あなたに関心がありますよ」という善意なのはよくわかる。 しかし、“The road to hell is paved with good intentions.”という諺にもある通り、「どんな善意もひどい結果を生むことがある」のである。
とはいうものの、私は「外国生まれのアジア人、しかも女(つまり何重にもマイノリティ)」という特権を生かし、生粋のアメリカ人が超えられない一線を超えて、相手の人種・民族などに立ち入った話を聞きだせることがある。話題の一つとして、私自身の日本人としての特異性・文化、男性優位の職場で女性として経験したこと、などの話しをちょっと振ってみるのだ。それを受けて、相手が自分自身の人種・民族について話し出したら、それを「OKサイン」とみなして少しずつ質問していくと、思いがけなく興味深い話が聞けることが多い。
本題に戻って、アメリカの人種問題といえば「大多数の白人と、少数派の黒人」という構図が浮かぶが、そうした伝統的な姿から問題はもっと複雑化している。地方によっても直面する問題は異なるのだが、当地では、もはや50%を越すマジョリティの人種がいないのに加え、外国生まれの人たちも大勢いる。それは、シリコンバレーといえば誰もが思いつくインド人や中国人だけではなく、フランス人だって2-3万人はいるし、私の知り合いを見渡しても、ベルギー人もオーストラリア人もロシア人もいれば、ドイツ人とガーナ人のカップルもいる。隣の家の人はイギリス人だ。バリバリのイギリス英語で話しかけられるとちょっと怖い。
もとい、こうした、人種・民族・国籍を超えたdiversityは、シリコンバレーの大きな強みとなっている。世界から優れた人材を集められるからだ。この間も、選りすぐりのベンチャーの社長数十人のプレゼンテーションを続けて聞く機会があったが、何割かは英語にアクセントのある外国人。エンジニアだけでなく、マネジメントという限られた才能も世界から集めてきているのである。
こうしたdiversityのもう一つの効用は、アメリカにしては珍しくいろいろな国の食べ物が楽しめること。イタリアン・フレンチ・中華・インド・メキシカン・ベトナム料理などはどこにでもあるし、さらに変わったところでは、「ロシア料理」、「ベジタリアン・インド料理」、「ベジタリアン・ユダヤ料理」なんてのもある。(最後のは「聞くだにまずそう」と、同行してくれる人が現われないため未だ未経験。勇気ある同行者求む)。
というわけで、果たして、これから5年、10年経ったとき、この地の人種構成(とレストラン構成)がどうなっているのか、今から楽しみである。
筆者紹介
渡辺千賀/JTPA代表
(*)AMD, Apple, Applied Materials, Cisco, HP/Agilent, Intel, Oracle, Solectron, Sunの10社
on コラム Posted by jtpa at 2003年03月02日 00:00




